0524 花のある構内

 

おそらくどこかの大学構内にいた。

花を見に来たはずだった。

駐車場の先にある花のトンネルを抜けると、平野にポツポツと草が生えたような土地があった。うっすらと道になっているようだったが無視して歩き回っていた。池には水蓮が浮かんでいた。

空は薄暗かった。オレンジとピンクと紫が混ざり合ったような色だ。

私は一人だったが、周りを見ると大抵は恋人同士で来ているようだった。

少し歩くと、建物が見えた。和風の屋敷が並んでいた。

いつのまにか足元には砂利が敷かれていた。塀の外には柵が設置されていて、この隙間を通路として使うらしい。

 

◆◆

 

ツツジの花だったと思う。

眼前に一面のツツジがあった。

私は建物の中に入る気になれなくて、外周をひたすら歩いていた。屋敷はいくつかあって、中ではそれぞれ企画展や催し物をやっているみたいだった。

そのうち自分がどこにいるのかも分からなくなってきた。腰ほどの高さで咲いている花々は揺れていた。匂いは特になかった。

古い掲示板のようなものを見つけたので、地図が欲しいと思い、覗き込んだ。全ての掲示物は朽ちており、読める状態ではなかった。

そうしていると、背後から声をかけられる。

日焼けした顔の優しそうなおじさんだった。曰く、○○レンジャーだそうだ(とある戦隊モノだった。検索で出るとまずいので伏せておこう)。

絶対に違うと思うが、本人が言うのだからそうなんだろう。

おじさんの後ろにも何人かの隊員がいて、微笑みかけてくれた。なぜかとても安心したのを覚えている。

なんでも、この辺りの屋敷は入ってはいけないことになっているらしい。私は奥に迷い込みすぎたのだと聞かされる。

周りを見渡すと、たしかに私以外の客は誰一人いなくなっていた。

おじさんは道を指差し、水蓮の池まで戻るんだよと念を押す。

言われた通りに進んで行った先に、気になる屋敷を見つけた。多分、私にはここが目的地だったんだろうと思う。細い通路を抜けて門を潜ると、武家屋敷のような作りになっていた。

地面は土間だったので、蔵の方へ行ったのだと思う。

そこで何かを見た気もするが、なにひとつ記憶がない。奇妙な余韻だけがあった。

私は何故か外に出られなかった。

出ようと思ってはみるが、特にそこまで出たいわけではなかったので、扉の近くに立ち尽くしていた。

そこでは着物を着たおじさんが待っていて、私を送っていくと申し出た。曰く、戦国時代に活躍していた殿様らしい。

とにかく、その彼に連れ出されて、ようやく外に出られたのだった。

 

◆◆◆

 

私を助けた○○レンジャーたちは死んでいた。

体を裂かれて上半身だけになってすでに硬直していたり、内臓がはみ出て痙攣していたり、パイプ状のものに腹部を貫かれて壁に刺さっていたりした。

ピンクの人はロボットだったようで、シリコンの皮膚をすべて剥がされ、機械部分がむき出しになったままはりつけにされていた。彼女だけはまだ生きているようだった。