0524 花のある構内
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おそらくどこかの大学構内にいた。
花を見に来たはずだった。
駐車場の先にある花のトンネルを抜けると、平野にポツポツと草が生えたような土地があった。うっすらと道になっているようだったが無視して歩き回っていた。池には水蓮が浮かんでいた。
空は薄暗かった。オレンジとピンクと紫が混ざり合ったような色だ。
私は一人だったが、周りを見ると大抵は恋人同士で来ているようだった。
少し歩くと、建物が見えた。和風の屋敷が並んでいた。
いつのまにか足元には砂利が敷かれていた。塀の外には柵が設置されていて、この隙間を通路として使うらしい。
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ツツジの花だったと思う。
眼前に一面のツツジがあった。
私は建物の中に入る気になれなくて、外周をひたすら歩いていた。屋敷はいくつかあって、中ではそれぞれ企画展や催し物をやっているみたいだった。
そのうち自分がどこにいるのかも分からなくなってきた。腰ほどの高さで咲いている花々は揺れていた。匂いは特になかった。
古い掲示板のようなものを見つけたので、地図が欲しいと思い、覗き込んだ。全ての掲示物は朽ちており、読める状態ではなかった。
そうしていると、背後から声をかけられる。
日焼けした顔の優しそうなおじさんだった。曰く、○○レンジャーだそうだ(とある戦隊モノだった。検索で出るとまずいので伏せておこう)。
絶対に違うと思うが、本人が言うのだからそうなんだろう。
おじさんの後ろにも何人かの隊員がいて、微笑みかけてくれた。なぜかとても安心したのを覚えている。
なんでも、この辺りの屋敷は入ってはいけないことになっているらしい。私は奥に迷い込みすぎたのだと聞かされる。
周りを見渡すと、たしかに私以外の客は誰一人いなくなっていた。
おじさんは道を指差し、水蓮の池まで戻るんだよと念を押す。
言われた通りに進んで行った先に、気になる屋敷を見つけた。多分、私にはここが目的地だったんだろうと思う。細い通路を抜けて門を潜ると、武家屋敷のような作りになっていた。
地面は土間だったので、蔵の方へ行ったのだと思う。
そこで何かを見た気もするが、なにひとつ記憶がない。奇妙な余韻だけがあった。
私は何故か外に出られなかった。
出ようと思ってはみるが、特にそこまで出たいわけではなかったので、扉の近くに立ち尽くしていた。
そこでは着物を着たおじさんが待っていて、私を送っていくと申し出た。曰く、戦国時代に活躍していた殿様らしい。
とにかく、その彼に連れ出されて、ようやく外に出られたのだった。
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私を助けた○○レンジャーたちは死んでいた。
体を裂かれて上半身だけになってすでに硬直していたり、内臓がはみ出て痙攣していたり、パイプ状のものに腹部を貫かれて壁に刺さっていたりした。
ピンクの人はロボットだったようで、シリコンの皮膚をすべて剥がされ、機械部分がむき出しになったままはりつけにされていた。彼女だけはまだ生きているようだった。