07??ループ

◆ループ

 

目覚めると、真っ暗な部屋の中にいた。

目が慣れて来たころ、ここが自分の部屋であることを思い出した。

天井にぶら下がっている蛍光灯は、外からの光で薄っすらと形がわかる。

時間を確認するために、右手だけを持ち上げて携帯を探す。携帯の感触があった。

感触はあったが、携帯は持ち上がっておらず、首も回っていない。そもそも、私は腕を上げてすらいなかった。

 

・・・

 

目覚めたので時間を確認しようと右腕をもちあげる。携帯の場所はわかっているので、あたりをつけて拾い上げた。

ホームボタンを押しても反応がない。液晶にも当然何も映ってはいなかった。

押し込まれるタイプのボタンではないので、充電が切れていたりするとボタン部分がただの板になる。そういうときに少し虚しい気持ちになる。

そもそも腕が上がっていないので、携帯を持ち上げてもいないし、ホームボタンを操作しているはずも無いのだ。

 

・・・

 

暗い部屋の中で目覚めた。携帯で時間を確認する。当然できなかった。

充電が切れているのか、ホームボタンも反応しない。なんとなくわかっていた気がする。

これは多分間違った行動なのだ。

行き止まりだ。

 

・・・

 

目覚める。

携帯の電源は入らない。液晶画面も真っ暗になっている。

まずは部屋の電気をつけよう。

起き上がって、部屋の電気をつけよう。

体が重い。硬直しているかのようにどこもかしこも動かない。

このままずっと動かないのかもしれない。

 

・・・

 

目覚めると真っ暗な部屋にいて、とにかく部屋の電気をつけようと思った。

部屋に明かりが戻れば大丈夫だ。きっと大丈夫になる。

小指から順番に折りたたんで、人差し指まで畳んだらまた小指から開いていく。

ゆっくりと指先をほぐしてから、慎重に起き上がった。

すべての動作はできるだけ緩慢にしなければならない。

そうしなければ先に進まないのだ。

ベッドから床につま先を移動させた瞬間、目覚めた。

元の場所に寝転んだままだった。

 

・・・

 

目覚めた。

起き上がれない。

掛け布団が重すぎるのかもしれない。

ベッドの下にでも転がり落ちて、這っていけばそのうち立てるようになるかもしれない。

とにかく電気をつけなければならない。明かりさえあればなんとかなる。

床を這って、壁によりかかりながら立ち上がった。

蛍光灯の紐を引く。

部屋は暗いままだった。

 

・・・

 

蛍光灯の紐を引く。

蛍光灯の紐を引く。

蛍光灯の紐を引く。

蛍光灯の紐を引く。

明かりはつかない。

自分の体はベッドに横たわったままだ。

 

・・・

 

明かりはつかない。

 

・・・

 

おそらく寝室は電球が切れているのだろう。

居間まで行ってみよう。

向こうの部屋ならきっと大丈夫だ。

体が重い。視界は暗いままだ。

床を這って移動する。いやに柔らかい。

手や足は本当に動いているのだろうか。末端に意識を集中する。

 

・・・

 

気がつくとベッドの上であおむけになっていた。

やるべきことは決まっている。

 壁伝いに隣の部屋までたどり着いた。

スイッチを入れる。明かりはつかない。

紐を引いてみる。

何度も引いた。何度も何度も引いた。

部屋は暗いままだ。

 

・・・

 

・・・

 

・・・

 

玄関に非常用のライトを設置していた。

あれは電池式だ。停電でも明かりは点くはずだ。

明かりさえあればこの状況から抜け出せる。

ベッドから這い出して玄関へ向かう。

玄関には誰かの影があった。

 

・・・

 

玄関に非常用のライトを設置していた。

あれは電池式だ。停電でも明かりは点くはずだ。

明かりさえあればこの状況から抜け出せる。

ベッドから這い出して玄関へ向かう。

ライトはつかなかった。

 

・・・